「もっと勉強しなさい」「量が足りない」。愛知県の高校受験でよく言われる言葉ですが、同じくらい勉強しているのに合否が分かれるのはなぜでしょうか。
理由は、愛知県公立高校入試の得点が「学力の高さ」ではなく「どの問題を取ったか」で決まるからです。1教科22点、5教科で110点しかないこの試験には、全員が取らなければいけない問題と、取れなくても構わない問題がはっきり存在します。
このページでは、井ノ塾が集計した2026年度入試の設問別・内申点別の正答率データを使って、そのことを実際の数字で確認します。そのうえで、井ノ塾が生徒の対策で使っている目標点からの逆算の考え方を公開します。
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愛知県公立入試は1教科22点・5教科110点しかない
愛知県の公立高校入試は、学力検査が1日で5教科。1教科あたり22点満点、5教科合計で110点満点です。この「110点」という数字が、愛知県の受験対策のすべての出発点になります。
1教科22点を、およそ20問で分け合う形になります。つまり1問あたりの重みが非常に大きい。1問落とすことが、そのまま合否に直結する試験だということです。
約20問で旭丘から中村まで振り分けるという無理な設計
ここで考えてほしいのは、この同じ問題を誰が解いているのかということです。
旭丘高校を受ける生徒も、天白高校を受ける生徒も、中村高校を受ける生徒も、全員がまったく同じ問題を解きます。愛知県の公立高校入試は学力検査が1回しか実施されず、その1回の点数でA・Bグループ両方の合否が決まるからです。
つまり出題する側は、約20問という限られた設問数の中で、県内すべての受験生の得点を散らばらせなければいけないということになります。これはかなり無理のある設計です。
問題を簡単にしすぎると、上位校を受ける生徒同士で差がつかず、内申点だけで合否が決まってしまいます。逆に難しくしすぎると、上位層では差がついても、中堅から下の層は全員が解けずに差がつきません。
だから問題は「全員が取る問題/中堅で差がつく問題/上位で差がつく問題」に分かれる
この矛盾を解決するために、愛知県の公立高校入試は1教科の中に難易度の違う問題を意図的に混ぜて出題しています。これは最近始まったことではなく、井ノ塾が塾を立ち上げた当初からずっと変わっていない愛知県の特徴です。
どの学力層でも正答率が高い問題。ここは差をつけるための問題ではなく、落とした人が脱落するための問題です。上位校を受ける生徒にとっては、間違えた時点で不合格が濃厚になります。
学力層が下がるにつれて正答率がはっきり落ちていく問題。中堅校を目指す生徒にとっては、ここが直接の勝負どころになります。
正答率が全体的に低く、上位層でも半分程度しか取れない問題。いわゆる思考力を問う問題がここに入ります。上位校を受ける生徒以外は、取れなくても合否に影響しません。
この3つが1教科の中に混ざっている。だからこそ、自分が受ける学校によって「対策すべき問題」がまったく違ってくるのです。
内申帯別の正答率データで見ると、はっきり3層に分かれている
ここからは実際のデータで確認していきますが、その前にこのデータがどこから出てきたものなのかをお伝えしておきます。
愛知県も高校も、設問ごとの正答率を公表していません。まして「内申点の帯ごとにどの設問で差がついたか」という数字は、どこを探しても出てきません。
井ノ塾は2020年から愛知県初の合格判定システムを運営しており、この仕組みは特許(特許第7698258号)を取得しています。毎年多くの受験生から集まる回答データがあるからこそ、設問と内申点をかけ合わせたこの集計が可能になっています。
塾の指導経験や体感ではなく、実際に受験した生徒の回答から出した数字だということを前提に読み進めてください。
ここまでは考え方の話ですが、実際のデータで見ると、この3層は明確に現れます。井ノ塾では2026年度入試の設問ごとの正答率を、受験生の内申点の帯(40以上/35〜39/30〜34/29以下)に分けて集計しました。
同じ1枚の問題用紙の中に、まったく性質の違う問題が並んでいることが数字で見えてきます。
全層が8〜9割取る問題=落とした時点で不合格
まず目を引くのが、内申40以上の生徒も、内申29以下の生徒も、そろって高い正答率になっている設問です。学力層による差がほとんどありません。
| 教科・設問 | 内申 40以上 |
内申 35〜39 |
内申 30〜34 |
内申 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| 国語 三(一) | 94.4% | 94.7% | 93.8% | 83.1% |
| 数学 1(1) | 97.1% | 96.4% | 98.4% | 93.1% |
| 社会 2(1)A | 94.1% | 87.7% | 90.0% | 74.1% |
| 国語 一(一) | 93.2% | 87.1% | 81.9% | 74.8% |
2026年度 愛知県公立高校入試/井ノ塾 合格判定サイト集計
注目してほしいのは国語の三(一)と数学の1(1)です。内申35〜39の層が94.7%、内申30〜34の層が98.4%と、内申40以上の層をわずかに上回っています。つまりこの設問は、学力の高さで正答率が決まっていません。
この種の問題は、点数を取るための問題ではないということです。落とした人だけが脱落する問題。上位校を受ける生徒がここを落とすと、他で挽回する余地がないため、それだけで不合格になり得ます。
「もっと難しい問題が解けるようにならないと受からない」と考える方は多いのですが、実際に不合格になっている生徒の多くは、難問が解けなかったのではなく、全員が取っている問題を落としています。ケアレスミスが致命傷になるのは、この構造のためです。
内申帯で10〜20%落ちる問題=中堅層の勝負どころ
次に、内申40以上から35〜39、30〜34へと下がるにつれて、正答率が1段階ごとに階段状に落ちていく設問があります。
| 教科・設問 | 内申 40以上 |
内申 35〜39 |
内申 30〜34 |
内申 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| 社会 2(2) | 82.5% | 66.1% | 59.2% | 39.1% |
| 英語 リス3 問2 | 83.8% | 63.6% | 49.6% | 35.9% |
| 社会 2(3)B | 82.5% | 72.9% | 61.8% | 39.4% |
| 数学 1(6) | 90.0% | 83.9% | 81.3% | 57.1% |
| 英語 1(3) | 92.2% | 81.1% | 71.3% | 54.7% |
2026年度 愛知県公立高校入試/井ノ塾 合格判定サイト集計
英語のリスニング大問3・問2を見てください。内申40以上では83.8%が正解しているのに、35〜39では63.6%、30〜34では49.6%まで落ちます。1段階下がるごとに14〜20ポイントという大きな落差です。
この階段状に下がっていく問題こそが、中堅校の合否を分けている問題です。中堅校を目指す生徒が本当に対策すべきなのは、難問ではなくここです。逆に言えば、ここを確実に取れるようにするだけで、順位は大きく動きます。
数学の大問1は基礎計算のかたまりですが、(1)は全層が93〜98%で差がまったくつかないのに対し、(6)は90.0%から57.1%まで33ポイントも開きます。「大問1だから基礎」と一括りにできないということです。どの設問が自分にとっての勝負どころなのかは、大問単位ではなく設問単位で見ないと分かりません。
学力とあまり相関しない問題=思考力型、上位でも半分取れれば十分
3つ目は、内申の帯が変わってもあまり正答率が動かず、しかも全体的に低い設問です。取れる生徒は取るし、取れない生徒は取れない。学力の高低とあまり関係のない出題です。
| 教科・設問 | 内申 40以上 |
内申 35〜39 |
内申 30〜34 |
内申 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| 国語 一(三) | 63.7% | 57.6% | 58.3% | 53.9% |
| 国語 一(二) | 66.7% | 61.2% | 53.7% | 49.1% |
2026年度 愛知県公立高校入試/井ノ塾 合格判定サイト集計
国語の一(三)は、内申40以上でも63.7%しか取れておらず、内申29以下との差はわずか9.8ポイントしかありません。学力層に関係なく、4割前後の生徒が落としているということです。
いわゆる思考力を問う問題がこれに近く、その場で試行錯誤できるかどうかが問われます。愛知県の公立入試はパターン問題が少なく、知識だけでは解けないこの種の出題に力を入れているのが特徴です。
さらに極端な例もあります。2026年度で最も正答率が低かった数学の大問3(3)②(立体図形・動点)は、全体の正答率が約5.2%。内申40以上に絞っても12.4%でした。県内トップ層でも9割近くが落としている問題です。
最上位校を受ける生徒であっても、この層の半分程度が取れていれば合格ラインに届きます。中堅校を目指す生徒であれば、そもそも対策の対象外です。正答率5%の問題を解けるようにする時間があるなら、②の層を確実にするほうが点数は上がります。
正答率が極めて低かった難問
内申点に関わらず、多くの受験生が得点できなかった設問です。複雑な思考や計算、深い記述力が求められた問題が並びます。
| 教科 | 設問 | 問われた内容 (井ノ塾による推定) |
全体 正答率 |
内申40以上 の正答率 |
|---|---|---|---|---|
| 数学 | 3(3)② | 立体図形・動点 | 約5.2% | 12.4% |
| 英語 | 2(2) 4番目 | 整序英作文(並べ替え) | 約18.5% | 38.2% |
| 社会 | 4(2) | 歴史の記述(背景説明) | 約21.3% | 42.1% |
| 国語 | 一(五) 4番目 | 文章構成・論理読解 | 約23.6% | 46.0% |
2026年度 愛知県公立高校入試/井ノ塾 合格判定サイト集計。正答率は集計値、「問われた内容」は設問内容からの推定です。
注目してほしいのは、内申40以上の層に絞っても正答率が上がりきらないことです。数学3(3)②は12.4%、英語の整序英作文でも38.2%。県内トップ層であっても、これらの設問は半分以上が落としています。
裏を返せば、これらを取れなくても合格している生徒が大多数だということです。ここに時間をかけるかどうかは、志望校の目標点から逆算して判断する必要があります。
5教科の正答率データ(2026年度)
ここまでに挙げた設問を含め、集計した5教科分のデータを掲載します。ご自身の内申点の列を縦に見て、どの設問が「取らないといけない問題」なのかを確認してみてください。
5教科の設問別・内申点別 正答率データを開く
| 設問 | 40以上 | 35〜39 | 30〜34 | 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| 一(一) | 93.2% | 87.1% | 81.9% | 74.8% |
| 一(二) | 66.7% | 61.2% | 53.7% | 49.1% |
| 一(三) | 63.7% | 57.6% | 58.3% | 53.9% |
| 二(一)① | 68.3% | 54.0% | 43.7% | 34.2% |
| 三(一) | 94.4% | 94.7% | 93.8% | 83.1% |
| 設問 | 40以上 | 35〜39 | 30〜34 | 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 97.1% | 96.4% | 98.4% | 93.1% |
| 1(4) | 88.4% | 83.3% | 82.9% | 62.7% |
| 1(6) | 90.0% | 83.9% | 81.3% | 57.1% |
| 1(9) | 90.4% | 85.2% | 79.4% | 61.2% |
| 設問 | 40以上 | 35〜39 | 30〜34 | 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 76.1% | 68.0% | 72.2% | 66.4% |
| 2(1)A | 94.1% | 87.7% | 90.0% | 74.1% |
| 2(2) | 82.5% | 66.1% | 59.2% | 39.1% |
| 2(3)B | 82.5% | 72.9% | 61.8% | 39.4% |
| 設問 | 40以上 | 35〜39 | 30〜34 | 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| 1(1) | 87.4% | 80.7% | 70.4% | 51.4% |
| 2(1)① | 86.0% | 76.5% | 73.2% | 55.0% |
| 2(3) | 76.9% | 63.4% | 43.1% | 28.1% |
| 3(1) | 86.8% | 79.7% | 76.2% | 49.1% |
| 設問 | 40以上 | 35〜39 | 30〜34 | 29以下 |
|---|---|---|---|---|
| リス1 問1 | 91.1% | 79.5% | 74.1% | 63.5% |
| リス3 問2 | 83.8% | 63.6% | 49.6% | 35.9% |
| 1(3) | 92.2% | 81.1% | 71.3% | 54.7% |
| 2(1) | 90.8% | 88.1% | 75.2% | 51.6% |
教科ごとに、正答率が落ちやすいのは次のような設問でした。
- 国語:大問一(論理的文章)の後半にある、文章全体の構造を問う設問
- 数学:図形の性質と計算を組み合わせた、大問3の後半部分
- 社会:複数の資料(グラフや年表)を照らし合わせて正誤を判断する設問
- 理科:実験結果から、比例関係や数値計算を導き出す設問
- 英語:文脈に合うように動詞の形を変えたり、適切な代名詞を入れたりする文法的処理
目標点から逆算すると「落としていい問題」は決まっている
ここまでの内容を、実際の得点計算に落とし込みます。
愛知県の公立入試では、内申点と当日点を校内順位決定方式(Ⅰ〜Ⅴ型)で合算して順位が決まります。志望校と自分の内申点が決まれば、必要な当日点は自動的に決まるということです。
内申42〜43で明和なら当日93点=1教科18〜19点、落とせるのは2〜3点分
たとえば内申42〜43で明和高校を目指す場合、当日点で93点前後が必要になります。5教科で93点ということは、1教科あたり18〜19点。22点満点ですから、落としていいのは1教科につき2〜3点分だけという計算です。
1問1点前後の試験で、間違えていいのが2〜3問。この条件で、どの問題を落とすかを考えてみてください。
全員が取る問題を落とせば、その時点で枠を使い切ります。中堅層で差がつく問題も同様です。落としていい2〜3点分は、思考力型の問題に充てるしかありません。言い換えれば、上位校を目指す生徒がやるべきなのは「①と②を完璧にした上で、③を半分取る」ことです。
向陽の国際科学科でも95点、旭丘でも95点前後
誤解されがちですが、愛知県で最も難易度の高い学校であっても、当日点で満点が必要なわけではありません。県内で最も高いとされる市立向陽高校の国際科学科でも、旭丘高校でも、当日点は95点前後が一つの目安になります。
95点ということは、1教科19点。県内最上位の学校でも、1教科3問前後は間違えられるということです。
ここが理解できると、対策の方向が変わります。最上位校の受験生に必要なのは「すべての難問を解けるようにすること」ではなく、「3問しか間違えられない状態をどう作るか」です。そしてその3問をどこに使うかは、事前に決めておけます。
内申30以下なら1教科10点。取る問題と捨てる問題を先に決める
逆のケースも見てみます。内申30以下の生徒が公立高校の合格を目指す場合、必要な当日点はおよそ50点前後。1教科あたり10点です。
22点満点で10点ですから、半分以上を落としても合格できるということになります。ここで大事なのは、その10点をどこで取るかです。
データを見ると、内申29以下の層でも数学1(1)は93.1%、国語三(一)は83.1%が正解しています。この「全員が取る問題」を確実に取ることが、そのまま合格ラインになります。逆に英語のリスニング大問3・問2(35.9%)や社会2(2)(39.1%)のような設問に時間を使っても、得点にはつながりにくいということです。
もう少し上、内申30〜34で中堅校を目指す場合は、1教科13〜14点あたりが目安になります。この場合は①に加えて、②の中堅層で差がつく問題を取りにいく必要が出てきます。数学の難しい図形問題のような、明らかにレベルの違う問題を無理に追いかけるのは時間の使い方として適切ではありません。
「満遍なく」がなぜ落ちるのか
ここまで読んでいただければ、愛知県の受験対策で最も避けるべきことが見えてきます。全範囲を均等に勉強することです。
満遍なくやると穴も満遍なくできる
受験までの時間は限られています。その限られた時間を全範囲に均等に配分すれば、当然ながらどの範囲も中途半端な仕上がりになります。満遍なく勉強した結果、穴も満遍なくできるということです。
そして愛知県の入試は約20問しかありません。その中途半端な穴が、たまたま「全員が取る問題」に当たった時点で終わります。正答率97%の問題を落とすということは、それだけで100人中3人の側に回るということです。
取れる問題を落として取れない問題に時間を使う構図
実際の試験でよく起きるのが、次のような形です。
本来なら確実に取れるはずの問題を、確認不足やケアレスミスで落とす。その一方で、自分の志望校では取れなくてもよかった難問に時間をかけ、そこで時間切れになる。結果として取るべき問題を落とし、取らなくていい問題に時間を使った状態で試験が終わります。
これは本人の努力不足ではありません。どの問題を取るべきかを決めないまま試験に臨んだことが原因です。
過去問の直しについても同じことが言えます。間違えた問題をすべて直させようとする方は多いのですが、志望校によっては直す必要のない問題があります。正答率5%の問題を何時間もかけて理解しても、その1問が本番で出ることはありません。そこまで直していると、本当に必要な①と②の精度を上げる時間がなくなります。
勉強時間や演習量は、受験生の間でそれほど大きな差がつきません。ほとんどの生徒が同じように勉強しています。差が生まれるのは、その時間をどこに配分したかです。まず自分の目標点を出し、取る問題と捨てる問題を決める。愛知県の公立入試では、この順番でしか点数は動きません。
取るべき問題が決まったら、次は公立と私立で対策を分けます。私立は6割で合格できるのに対し、公立は8〜9割必要な学校があります。必要な得点率が違えば、対策の考え方も変わります。
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